ニューノーマルに向けた人材の準備はできていますか?

適応力に長けた人材とは?人材をいかに採用し、育成し、引き留めるのか?-デジタルワークスペースを提供するシトリックス・システムズ・ジャパン株式会社(以下シトリックス)とのインタビューを通したボイド & ムーア エクゼクティブサーチ(以下BMES)の考察 。

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山火事のごとく世界中であっという間に広がっている現象、2020年の流行語大賞の最有力候補と言えば… 新型コロナウイルスを連想される方も多いかと思いますが、ここで話題にしているのは、コロナにも関連のあるテーマ「ニューノーマル」についてです。

ニューノーマルは待ったなし

BMESが4月に700名を対象にAPACで実施した調査によると、パンデミックで企業は大慌てになり、初動対応では、直ちに在宅勤務命令を出す(422)、感染症対策のための防護具を提供する(359)、非常事態発生時のコミュニケーションを改善する(349)ということが中心でした。

新型コロナウイルス 影響 調査 企業 
新型コロナウイルスによるビジネスへの影響度調査

本調査の中で、その時の様子をよく表しているものが、コールマンAPAC 社長の中里豊氏のコメントです。最初の数週間は、完璧さよりもスピードが何より重要だったことを、このように振り返っています「2月末から在宅勤務を徐々に導入し、3月中旬までには、全社員在宅勤務を可能にしました。テクニカル面では完全に準備が整ってはいなかったものの、早く在宅勤務体制を始め、並行してインフラの問題解決を行っていきました。公共交通機関を使うことに懸念を抱かなくてもいいようにすることが先決だったのです。」

多数のロックダウン解除が実施された今、企業は、ニューノーマルについての理解を高めようと必死です。在宅勤務を永遠に許可へと動くツイッターのような会社や、週休3日制を視野にいれるニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相のような進歩的な政治家が登場する一方で、マスクと手洗い必須で社員の段階的なオフィス出社へと動いている会社もあります。

しかし、「ニューノーマル」は、単にワークスタイルや全般的な健康対策に限ったことではありません。他にも、破壊的イノベーションともいえる多くの課題と向き合っていかなければなりません。急速に変化する顧客ニーズ、サプライチェーンの中断、キャッシュ不足、政府の介入、ビジネスモデルや生産モデルの変化、社員のストレスレベルや不安の高まり等、問題は山積です。こうした状況の中、プロセスを見直し、コンティンジェンシープランを作成することは、必ずしも難しいことではないかもしれませんが、今真っ先に問うべき緊急の課題を取り上げていきたいと思います。

ニューノーマルの中、生き残り、成功する人材はいますか?

1.ニューノーマルを乗り切るカギは適応力

シトリックスは、デジタルワークスペースを提供しているソリューション企業です。お客様が「ユーザー中心のソリューションでより快適な働き方」を実現する支援提供だけでなく、自社の優秀な人材のエンゲージメントを高め、ここで働き続けたいと思われるための取り組みに投資しています。シトリックス代表取締役社長 尾羽沢 功氏人事部長 小林いづみ氏との対談にて、同社の人材戦略についてお話を伺いました。

インタビュー風景:尾羽沢氏(右下)、小林氏(左)、小保方氏(右上)、記者

今私たちが直面している課題は、唯一の正解というものが存在しないような複雑なチャレンジです。そのような不確実な環境においては、マインドセットの転換が迫られています。これまでの知識の枠組みを超えて、これからの可能性に目を向ける必要があります。

Izumi Kobayashi Citrix
人事部長 小林いづみ氏

「今後ますます欠かすことができない資質になるのは、適応力です」と小林氏。仕事でもプライベートでも、これだけ環境が急速に変化する時代に、レジリアンス、つまり「弾力性」とか「跳ね返す力」とかいわれる力は、テクニカルスキル以上に重要度が増しています。「今私たちが直面している課題は、唯一の正解というものが存在しないような複雑なチャレンジです。そのような不確実な環境においては、マインドセットの転換が迫られています。これまでの知識の枠組みを超えて、これからの可能性に目を向ける必要があります。」

この話を聴いて、デロイトの適応可能な組織という考え方を思い起こしました*。それは、現在の限界、構造、規制にとらわれず、経験から学び続け全体のシステムがうまく回るように柔軟に対応するエコシステムが働いている組織のことです。そこでは、人々は、しなやかに変化を受け止めます。これまでは、従業員は新たなやり方には抵抗を示すものだという見方に押されて、こうした資質は、見過ごされてきました。

Isao Obazawa Citrix
シトリックス代表取締役社長 尾羽沢 功氏

適応可能な組織を築いていく上で、シトリックスでは、「好奇心」が重要視されています。「好奇心」は、「誠実」、「尊重」、「勇気」、「協業」と共に、常に、シトリックスの価値観の柱となっているものです。「好奇心は、成長マインドセットと同義ともいえるもので、機敏さと自己認識力の高さを示すものでもあります。効率中心から、レジリアンス中心へ、というニーズの転換が起こっているわけですから、もはや、優秀な個人に依存したり、当初の計画を回していくことにこだわる時代ではないということです」と尾羽沢氏は言います。

2.離れた場所でもワンチーム

適応可能な組織に欠かせない要素として、チームがあげられます。優秀な個人に組織パフォーマンスを委ねるのではなく、パフォーマンスを牽引する本質はチーム力だという考え方であり、シトリックスがコラボレーションを重視し、それを求めている所以でもあります。

「このような世界的危機ともいえる環境の中で、シトリックスを導いていくのは、適応力に富み、目的志向のコラボレーションを率先して行う人材です。自分の所属するチームだけではなく、組織の壁を越えて会社全体の視点で貢献ができる人は、真のリーダーだと思います。自分の先入観を払拭して、多くの異なるアイデアを取り入れて協業することが、今こそ切実に求められているのです」と小林氏は言います。

尾羽沢氏もまさに同じ考えをこう表現しています「急激な変化に溢れた世界の中で、多様性は非常に重要です。日本は同質社会と言われるかもしれませんが、違いを尊重して意思決定の質をあげていくことは、私の信条とも言えます。弊社の経営陣も一人ひとり異なる視点を持っていますので、私の意見にどんどんチャンレンジしてきて欲しいと思っています。『話す』より『聴く』、『指示する』より『質問する』、『ルールに従順する』より『ルールを破壊する』というのが、私のリーダーシップ原則です。」

自分の所属するチームだけではなく、組織の壁を越えて会社全体の視点で貢献ができる人は、真のリーダーだと思います。自分の先入観を払拭して、多くの異なるアイデアを取り入れて協業することが、今こそ切実に求められているのです。

好奇心をもったコラボレーター、つまり、不確実な環境の中でもしなやかに適応力を発揮し、思考の枠を広げ、前進していくことができる人こそ、ニューノーマルで成功する組織に求められています。「このようなマインドセットは、テクニカルスキルとは異なる種類の特性です。勉強したら簡単に習得できるというようなものではありません。だからこそ、社内から将来のリーダーを育てることの重要性を強く感じると同時に、外から新しい思考を持った人材を迎えることに取り組んでいます」と小林氏は続けます。

適応力をもつ人材の獲得-シトリックスの採用

シトリックスでは「採用は最も重要な仕事にあげられる」と尾羽沢氏が言うように、採用を進める各ステップが確立されています。「最初から最後まで一貫して、候補者の方々がよい経験をされるように、そして、我々にとって最善の採用という結果につながるように、ということを真剣に考えています。これは、社内応募でも社外応募でも変わることない思いです。こうした思いを共有するBMES様等の人材紹介会社とのパートナーシップも大切にしています。採用活動を始める前も肝心で、当該ポジションへの期待値や採用アプローチについて、関係者全員で同じ認識になるように、最初にしっかり話し合う場を設けています。」

シトリックスでは、正しい採用を支える適切なプロセスが強化されており、面接とオンボーディングは、中でも重要なステップです。

質問力がものをいう

面接の良しあしは、意図をもって質問を組み立てることに左右されます。面接では、候補者から語られるスキルやアクティビティを聴いて、そこからいかに掘り下げた質問ができるかが重要になってきます。例えば、適用力をみるためには、「問題をチャンスに変えていったときの状況、そのターニングポイントになった行動を具体的にお話ください」とか、「それまではうまくいっていた問題解決のやり方がうまくいかず、新たな方法を模索しなくてはならなかったときのことを聞かせてください」というように、適用力の発揮が求められるような実際の状況で、どのような行動をとり、どのような結果になったのかを伺っていきます。

適応力レベルを含め、候補者の強みの真相に迫れるように、シトリックスでは、インタビュートレーニングが実施されています。面接官は、実際の例を用いて、フォローアップの質問の仕方を練習したり、候補者といい関係を築きながら会話ができるようになる準備をしていきます。面接の場は、シトリックスの価値観「好奇心」を面接官が体現する場と言ってもいいでしょう。尾羽沢氏は語ります「弊社では、今、面接は全てオンラインに切り替わっています。意図を明確に持って質問すること、面接官全員が効果的に質問できることが、オンライン面接では殊のほか重要になります。」

完璧な人などいない

もう一つの重要な採用プロセスの柱は、オンボーディングです。「私たちは、完璧な人などいないとわかっています」と尾羽沢氏。「インタビュープロセスを通じて、候補者の強み、開発エリア、潜在的リスクという多面的な情報を収集します。」

シトリックスでは、こうした面接でのアセスメント情報をもとに、新入社員に対して、6か月オンボーディングプランを作成しています。新しい職場環境、新しいチームの中で、持てる力を早く発揮できるようになることを支援するもので、各個人にあわせてカスタマイズされた内容になっています。

継続的学びが促進される環境―シトリックスの人材開発

将来に向けたニーズを見据えたアセスメント

個人レベルのアセスメントを実施して、各社員の過去のパフォーマンスを評価する組織は多数ありますが、シトリックスでは、それとは一線を画すアプローチがとられています。

過去のパフォーマンスは目に見えやすいもので、そこに焦点が向きがちになりますが、過去の延長線上に将来が築かれるというのは幻想だということも受け止めなければなりません。

まず、組織全体の観点で、人材力のステータスを把握することは、常に経営の中核にあるテーマです。それが反映されている典型的な場は、タレントレビューです。タレントレビューは、経営陣レベルで、人についてのディスカッションをする会議ですが、ここでの最初のアジェンダは、ビジネスの現状、将来のビジネスニーズについてです。将来シトリックスに大きな影響を及ぼすと思われるトレンドやビジネス課題等について見解を共有し合った上で、人材ニーズについての話が交わされます。

次に、シトリックスでは、将来志向の人材アセスメントを取り入れています。「人材ニーズのアセスメントで常に問われるのは、将来を切り開くことのできるのはどのような人材かということです。過去の成功に甘んじていては将来の成功はないという現実から目をそらさないようにしています。過去のパフォーマンスは目に見えやすいもので、そこに焦点が向きがちになりますが、過去の延長線上に将来が築かれるというのは幻想だということも受け止めなければなりません」小林氏は語ります。シトリックスがポテンシャルという将来性に目を向けようとしているのはそのためです。ポテンシャルは、能力、没頭力、意欲、学ぶ力という軸で見られますが、「学ぶ力は、この環境下でとりわけ重要です」と尾羽沢氏は言います。「それは、オープンなマインドを持ち続ける姿勢、あいまいな状況でもやりきる力、新しい課題に新しい解決策を見出すことに他なりません。」

学び続ける環境作り

シトリックスのオフィスとバリュー (「誠実」、「尊重」、「好奇心」、「勇気」、「協業」)

学び続け、成長し続けることが促進される環境作り、それは、シトリックスにとっての大切な取り組みです。シトリックスでは、ラーニングモデルとして、経験、人とのつながり、リソース、研修という4つのアプローチを提示しています。経験とは、仕事の実践から学びを刈り取ることで、成長目標を設定し、その達成を加速させるようなチャレンジな仕事の機会を見極め、その経験を通してキャリアを開発していくことです。人とのつながりとは、教える側にも教えられる側にもなりながら、人との関係性を通じて学ぶことです。リソースとは、ラーニングセンターと呼ばれるポータルに、様々な学習コンテンツが用意されており、いつでもどこからでも必要な情報にアクセスできる環境整備のことです。研修とは、いわゆるフォーマルな学習の場です。

トレーニングセッションやテキストを読むことだけが学ぶ機会ではありません。むしろ、毎日様々な人に会って、対話をして、そうした関りの中から学ぶことの方が多いのではないかと感じています。

「この4つのアプローチで、学びが日々の仕事の中に組み込まれていく仕組みができます。トレーニングセッションやテキストを読むことだけが学ぶ機会ではありません。むしろ、毎日様々な人に会って、対話をして、そうした関りの中から学ぶことの方が多いのではないかと感じています」と尾羽沢氏は説明します。「また、数分単位で完了できるビデオから、数日間にわたる集中コースもオンライン化され、ニーズに応じて時間や場所を選ばず利用できる学習機会が提供されています。情報共有や学びが有機的に起こり、適応力を高めることができる職場環境を築いていきたいと思っています。」

シトリックスには、適応する組織の基盤が備わっていると言えるでしょう。戦略的な採用を進め、学習し続ける組織作りに注力することで、コロナと共存というニューノーマルの時代に、生き残りだけでなく、ビジネスの発展を可能にする人材を持つことができるのです。

*デロイトの適応可能な組織についての言及は、ライターであるBMESの分析・見解であり、シトリックスの人事戦略は、特定の会社の方針を信奉するものではない独自のものです。

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